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Team 片手業・TV : 新番組、第1話、時代劇、水戸黄門、視聴談など

NHK連続テレビ小説『マッサン』。後半の始まりは男二人の演技に救われて…。風間杜夫さん、そして住田萌乃ちゃん。

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NHK連続テレビ小説『マッサン』風間杜夫さん演じる森野熊虎。

http://www.nhk.or.jp/massan/premium/w16.html

 

NHK『マッサン』のホームページに「プレミアム」というサイトがあります。そこに、「物語のカギをにぎるキャストが語る…」と言うのがあり、14週「渡る世間に鬼はない」が泉ピン子さん。15週「会うは別れの始め」が堤真一さんでした。そして、それぞれの週の終わりには、私は必ず涙してしまいました。泉ピン子さん亡き後、どうなるものかと心配していましたが、堤真一さんがピン子さんに勝るとも劣らない演技で、うまく引き継いでくれました。NHKさん、このところは巧みに脇を配してドラマを盛り上げてくれています。その泉ピン子さん、堤真一さんに関してはそれぞれ個別に、当Blogで感想を述べてきました。今回は「物語のカギをにぎるキャスト」熊虎・風間杜夫さんのお話です。現在、放映中の「負うた子に教えられる」での「物語のカギをにぎるキャスト」はエマ・住田萌乃ちゃんですね。この子がとてもいい。妙に大人びた台詞がなく子どもらしくていじらしい演技を見せてくれています。

 

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NHK連続テレビ小説『マッサン』マッサンの演技を食ってしまった、無言のエマ・住田萌乃ちゃん。マッサンがエマの生い立ちを話し始めると、彼女は口を閉ざした。約4分ほどの沈黙。この幼い女優はその間、無言で胸中を表現し続けた。

 

『マッサン』の風間杜夫さんを語るについて、あまり彼について知っていることが少ないことに気づきました。あちこちで話題になったり、主役を演じたりで露出している分、うかつにも触れてきていませんでした。落語を演じた(または落語家である)ことは、騒がれていたので記憶にありますが、1972年に日活ロマンポルノで『風間杜夫』銀幕デビューというのは驚きでした。私が知っているのは『蒲田行進曲』『スチュワーデス物語』『銭形平次』くらいで、すでに過去の人だったのですが、つい最近『ごめんね青春!』で、久々に見せてもらいました。この時の風間さんの演技は、私の記憶と随分ズレがありました。つまり、好感の持てるいい演技を見せてくれたのです。そこで、改めて『蒲田行進曲』を見ることにしました。

 

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映画『蒲田行進曲』(松竹・角川春樹事務所)タイトル

 

蒲田行進曲』はつかこうへいさんの作品。この方、私と同郷(福岡県嘉穂郡・現在は嘉麻市)でした。以前に書いた『選TAXI』のバカリズムさんも近くに産まれた方でした。同郷の方たちが頑張っておられて嬉しい限りです。あの辺りは、炭坑が沢山あったので韓国の人も大勢住んでいました。つかさんもそんな生い立ちの方だったのでしょうか。名前の由来が在日に対する不公平に「いつかこうへいに」という思いが込められているそうです。話が逸れましたが、そのつかこうへいさんは劇作家、演出家として有名ですが、その影響も当然あるのでしょう。映画『蒲田行進曲』の監督は深作欣二さんでしたが、映画全編を通して「演劇の舞台」を見るようでした。特に、始まりから台詞のテンポが早い。これは舞台独特のテンポですね。舞台劇に慣れない私は、台詞についていくのが大変でした。

 

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水戸黄門』第1部第5話(TBS) この回は、ハナ肇さんに因縁をつけて小遣いを稼ごうとする中間役の汐路章さん。汐路さんは生粋の大部屋育ち。『水戸黄門』や『大岡越前』などでは巨悪にへつらうやくざの親分役が多い。

 

蒲田行進曲』は、ウィキによると「…松竹の蒲田撮影所を舞台としているものの、つかこうへいは東映京都撮影所の大部屋俳優である汐路章の階段落ちの逸話をテレビ『徹子の部屋』で汐路が語ったことで知り、(汐路章を)モデルに執筆したものであり…」とあります。汐路さんが『徹子の部屋』に出られたことがあると聞いて驚きです。この方、時代劇の悪役ではなくてはならない存在の人で、生粋の大部屋育ち。ちなみに、安が階段落ち前日に生命保険に入りまくって千夏と諍(いさか)いになる場面が描かれていますが、汐路さんが実際の階段落ちを演じる時、夫人のために保険に入っていたといいます。とまあ、こんな感じの『蒲田行進曲』で、銀ちゃんこと風間杜夫さんの美男振りは、モティーフと言われる中村錦之助さんと見まごうばかり。

 

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映画『蒲田行進曲』(松竹・角川春樹事務所)運転させろという銀ちゃんは免許持ってないでしょうと言われ「キャデラックに免許はいるか!」と凄む。人気に溺れてちゃらちゃらした銀ちゃんがそのまま風間杜夫さんに重なって思えていた。

 

そんな風間さんですが、私は、映画の中で女性を弄(もてあそ)び、自ら落語していく銀ちゃんに共感できずにそっぽをむいていたきらいがあります。その影響もあって、役者としての風間杜夫さんをじっくり見てこなかった。『蒲田行進曲』以後、『スチュワーデス物語』の教官役でも騒がれていたように記憶していますが、記憶の外です。次に、私の記憶の表に現れるのは『銭形平次』です。宮崎美子さんとの競演でしたね。宮崎美子さんは「ミノルタ一眼レフカメラのテレビCMで、木陰でTシャツとGパンを脱いでビキニ姿になり、大反響となりました。当時、私もファンだったかも。その『銭形平次』はほとんど見た記憶がありません。ここでも、「女性を弄ぶ銀ちゃん」のイメージを引きずっていたのかもしれません。

 

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『ごめんね青春!』(TBS)平助・錦戸亮くんの父親で永楽寺の住職役の風間さん。長男の嫁エレナちゃん・中村静香ちゃんの胸をのぞく不届きもの。実は市議会議員と仏教系高校・東(とん)高の同窓会会長。夜な夜な女遊びに耽(ふけ)る。

http://www.tbs.co.jp/gomenne_tbs/

 

風間さんは、それっきり、私がTVを見なくなったことも手伝って、記憶がありませんでした。ところが、最近になって意外な形で現れてくれました。『あまちゃん』の脚本を手がけて爆発的な人気を得た、宮藤官九郎さんの手になる『ごめんね青春!』でした。この奇妙なお坊さん役に、役以上のシュールさを感じました。かつての二枚目スターが妖しい坊さんを演じている姿が信じられませんでしたが、私の評価ががらりと変わった瞬間でした。今から思えばなんて事ないシーンや台詞だったように思えますが、それまで抱いていたイメージとかけ離れた演技に驚きました。

 

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NHK連続テレビ小説『マッサン』北海道でウィスキーを売り歩くマッサンは熊虎と出会う。

http://www.nhk.or.jp/massan/story/index_14.html

 

漸く、今日の本題にはいります。その『ごめんね青春!』から間もなくです。この『マッサン』で、これまた、えも言われぬ役柄で風間杜夫さんを見ることになりました。
第14週 1月5日~1月10日「渡る世間に鬼はない」では、国産初のウイスキーを発売したが全く売れず、マッサンは営業へ回るよう命じられました。マッサンは、北海道はスコットランドに似た気候風土なので、そこでだったらウィスキーの味が分かってもらえるかもしれないと期待に胸を膨らませてやってきたのですが、やはりウイスキーは売れませんでした。そんな時、マッサンはニシン漁師の親方・森野熊虎(風間杜夫さん)と出会い、ニシン漁で賑わう余市を訪れました。そして、第15週 1月12日〜1月17日「会うは別れの始め」は前回のBlogで語った通りです。マッサンは鴨居の大将のおかげで自己資金10万円を得て、「熊虎」こと、森野熊虎(風間杜夫さん)を頼って、希望に胸を膨らまして北海道の大地を踏むことになったのでした。

 

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NHK連続テレビ小説『マッサン』夢の大地へきたものの、マッサンたちが見たものは、ニシンで大儲けした殿様の熊虎ではなかった。

http://www.nhk.or.jp/massan/story/index_16.html

 

第16週 1月19日〜1月24日「人間到る処青山有り」に入り、マッサンはまず熊虎を頼って訪れます。そして、そこで見たものは借金取りの武井が熊虎に叩き出されるところでした。何でも任せろとマッサン達をもてなす熊虎ですが、息子の一馬(堀井新太)は歓迎しない様子。なんだか、家庭内がぎくしゃくしていることを危ぶむマッサンとエリーでした。また町の人々に挨拶に回る先々で熊虎の名前を出すと誰もが冷たい態度に豹変しました。さらに、熊虎の義理の弟であるりんご組合長の進・螢雪次朗さんに交渉に訪れるも、とりあってもらえません。熊虎は、この二年間、ニシンが来なかったことが原因で借金まみれになっていたのです。

 

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NHK連続テレビ小説『マッサン』川辺にてエリーに「熊さんの家、出よっ」と吐き捨てるように(そう見えた)いうマッサン。

 

そして、23日放送分。川辺に座り込むマッサンがいました。それを認めたエリーが近づき「マッサン」と声をかけます。エリーを見上げるマッサンは吐き捨てるように、

「熊さんの家、出よう」

と言うのです。とまどうエリーをよそに、マッサンは、

「このまんまじゃ、裏切り者の仲間じゃ思われて、リンゴの仕入れもできん」

と言いました。さらに、

「熊さんを頼ったわしがいけんかったんかのう」

と言います。

「熊さんの家、出て行きたくない」

というエリー。ここでマッサンは後悔し、愚痴を言い始めるのです。

「わしらの夢はどーなる?」

「わしゃ、北海道はもっと自由でみんなが力を合わせて生きる夢の大地じゃおもーてやってきたのに」

ここでエリーの言葉が強くなります。

「マッサン、何を言ってるの」「自由で夢のある大地はマッサンが作るんでしょう」「簡単に諦めないで」

こういう言葉で気持ちが晴れるのも作り事(ドラマ)だからでしょう。愚痴るマッサンはエリーから叱咤され、気を取り直すというシーンはこれまでにも何度もありましたね。マッサンが辛気くさいと言われるのはそういうことでしょうか? 私は職人にありがちな、考え込む、または慎重(一見、優柔不断)さを言われているものとして見ていました。しかし、どうやら「愚痴っぽいマッサン」が正解の思えます。

 

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NHK連続テレビ小説『マッサン』熊さんの義弟の進が武井を伴って熊虎の家を訪れた。そのワケとは

 

熊虎の家に熊虎の義弟である進・ 蛍雪次朗さんと借金取りの武井・ 北原雅樹さんが現れました。進は応対に出ようとする熊虎を制して、「今日は一馬に用事がある」と言います。奥から出てきた一馬の手には家の権利書がありました。一馬は自分らの借金で、これ以上周りに迷惑をかけられないと言って、権利書を借金返済に充てようとしたのです。これに、熊虎は激怒しました。刀まで持ち出して怒りを爆発させます。しかし、

「サムライの時代もニシンの時代も終わった」
と武井は言います。熊虎はまなじりをつり上げて、

「この刀はサムライの、会津の男の魂だ」

と、言いざまに刀を抜こうとしますが錆び付いて抜けません。嗤う武井。ついに家中を舞台に大立ち回りが始まりました。

 

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NHK連続テレビ小説『マッサン』階段落ち? まさかここで『蒲田…』のパロディはないでしょうが…。

 

そして、その最中に武井が階段から落ちるシーンがありました。これって、まさか…ですよね。しかし、そのようにも見えるのです。シリアスなドラマの中で、コメディで使われた階段落ちをパロディとしては使いませんよね。私の勘ぐりでしょうか? 階段で転んで、その隙に権利書を奪い返すと言う筋書きでしょうが、あえて、ここでは階段落ちは使って欲しくなかった。下りた拍子に何かにつまずいて転んでくれた方がすっきりします。あの有名な階段落ちを知っている人は少なくなってはいますが、知っている人も多い。だから、避けるべきだったと思います。さて、借金取りの武井が去った後、一馬が吐き捨てるように言いました。

会津の魂だあ、わらわせんな」
「そんなもん、とっくに捨てたくせに」
「オレやねーちゃん、ほったらかしやったくせに」

返す言葉を失った熊虎。

 

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NHK連続テレビ小説『マッサン』風間杜夫さん、しばし沈黙の演技が素晴らしい。

 

進・蛍雪次朗さんが割ってはいり、

「あにさん、一馬の気持ちもわかってやれ」
「本当は北海道大学いって 農業の勉強がしたかったんだ」
「ハナだって小学校の準教師やめたくなかった」
「あんたが自然を甘くみてニシンで失敗して 二人の人生も狂ってしまったんだ」

 

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NHK連続テレビ小説『マッサン』風間杜夫さん、しばし堪忍の演技。一馬の思いの丈を聞き入る。

 

一馬が言う。
「かあちゃんに苦労ばかりかけてたんだ」
「おやじが大事にしなかったから、かあちゃんは早死にした」
「オヤジが殺したようなもんだ」

と、その時、ハナが「一馬言い過ぎだ」と責める言葉も終わらないうちに熊虎は立ち上がり、

「も一回言ってみろ」

と言うと、一馬も、

「何度でも言ってやる」

 

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NHK連続テレビ小説『マッサン』「(かあさんは)オヤジが殺したようなものだ」という言葉についに激怒するが…。

 

言うや否や熊虎は一馬の襟首をつかんで締め付けました。しかし、一馬は熊虎の腕を振り切ると、熊虎をしたたか打ちのめしたのでした。駆け寄るハナ、マッサン、エリー。起き上がろうとしない熊虎。熊虎に「息子はオレを殴り倒すほどに成長したのか」という感慨があったのでしょうか? それとも息子に殴り飛ばされるほど老いてしまったと嘆いているのでしょうか。以下、番組HPで語った風間さんの談話です。

息子に殴られて鼻血を出すシーンがあるけれど、オヤジとしては情けないよね。 でも、人生の中にそういうことってあるんですよ。俺も若かったころ、オヤジに殴りかかったことがあってね。 二度と敷居をまたがせねぇって言われて、仲裁に入ったおふくろからは「気持ちは分かるけどおまえが謝らなきゃいけない」って。 わび状を書いたことがありますよ(苦笑)。で、自分の息子にも一度、殴りかかられたことがありましてね。 今回、一馬とのシーンを演じながら、あのときのことがまざまざとよみがえりました。 思春期にこうはなりたくないと批判するのも、オヤジって息子にとって乗り越えるべき存在だからなんでしょうね。

http://www.nhk.or.jp/massan/premium/w16.html


ドラマで息子を制したのはマッサンでした。

「どがな理由があっても こどもが親に手をあげちゃいかんて!」
とたしなめて、謝らせようとします。沈黙があって、エリーが、

「くまさん おかあさん 大事にしてた」
と、熊虎が誰よりも妻シノを誰よりも愛していたことを訥々と語った。
「だから(くまさんは)お母さんのために頑張った。
ニシン獲ってやっとこの家建てた。だけど間に合わなかった。(けれど)お母さんはよく分かっていると思う」

「知らないだろう。かあちゃんがどれほど苦労したか」と、一馬は熊虎に言った。すると、エリーが

「お母さんは熊さんのことを愛していた。愛する人のために頑張るのは苦労じゃない」と、エリーは自分の身とシノ(熊虎の妻)を重ね合わせたのか、そのように言うのでした。そして、エリーは熊虎に、

「どーしてちゃんと言わないのか」と、訳を話すように促したが熊虎は黙(もだ)して語らなかった。

「私聞いた。シノさん、よろこぶ顔みたい。笑顔で暮らしたい。だから(熊さん)頑張った」とエリーが言った時、万感を込めた熊虎のひと言があった。

「違う!」

 

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NHK連続テレビ小説『マッサン』「熊さんはシノさんのために家を守ろうとした」というエリーに、熊さんは漸く口を開いた。

 

「それは違う」という熊虎。そして、胸に秘めてきた万感を吐露するのでした。熊虎が物心ついた頃、会津は逆賊と言われていた。会津の人間が死んでも「会津のためにお経は読めない」と葬式を断られ、国を追われた。(だから)家族が安心して暮らせる、巣立って行った子どもたちがいつでも帰って来れるふるさとを作りかったのだと言う。熊虎の目は充血し涙は止まらなくなっていた。

 

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NHK連続テレビ小説『マッサン』熊さんはマッサンに万感を込めて「オレのゆめ受け継いでくれねーか」と涙ながらに、権利書を手渡した。

 

「この家建てて、やっとこさ長年の夢が叶った。」
「みんなが笑顔でめしが食えて力いっぱい働けて安心して子育てができる、そんなこしらえることができたと思った」
「だから、何を言われても、ここだけは手放したくなかった」
と胸の内を語る熊虎。そして、

「ここは、ハナと一馬がたったひとつの帰れる場所」

と言って、熊虎は天を仰いだ。このようにして、家族の絆は取り戻す事ができました。一馬も進も、エリーもマッサンも涙が止まらない。しかし、借金は残っているのです。と、熊虎は、

「オレのゆめ、受け継いでくれねーか」

と意を決し、懐から家の権利書を取り出しました。

 

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NHK連続テレビ小説『マッサン』受け取ったマッサンは「ほいで今、熊さんのおかげで腹がくくれた」という。川辺のシーンの背信から、翻ってのこの台詞は?

 

さて、ここからが腑に落ちないシーンです。
家の権利書を渡され、「(ふるさとを作る)夢を受け継いでくれ」と言われたマッサンの言葉です。
「3年前、熊さんにおーとらんかったら、わしゃ、北海道には来よーとは思わんかったかもしれん」
しかし、それより前、山崎に工場を建てる前にマッサンは北海道にスコットランドを見ていたのではなかったでしょうか。ま、それはいいとして、

「何もかも無くしてしまったやつがでけー夢見れる町だ」
(と熊さんは言った)」

「あの言葉がわしの背中を押してくれたんです。ほいで今、熊さんのおかげで腹がくくれた」

とマッサンは言いました。ここも、少し腑に落ちません。そして、マッサンは、
「わしゃー、約束します。この家が、また、力いっぱい働いた人がいつでもわろーて、飯食いに帰って来られる場所にします。わしゃー、この土地を、わしらの第二のふるさとにします」
と固く約束したのでした。

 

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NHK連続テレビ小説『マッサン』涙の熊虎。熊さんは感極まっているけれど、見ている私はいまひとつ、でした。

 

息子・一馬くんから罵られる間中、無言の演技を見せてくれた風間さん。そして、堰を切ったように力強くほとばしる台詞で魅了してくれた、涙を誘ってくれた風間杜夫さん。素晴らしかったです。この場も「何も足さない、何も引かない」演出だったのでしょうか。以上、ひととおり、この日のドラマを反芻してみましたが、最後に興ざめしました。私の興奮、感動は熊虎さんがマッサンに「夢を受け継いでくれねーか」と権利書を渡すシーンまでです。その後のマッサンの台詞はすべて書き直した方がいい。

思い出してみて下さい。前回の冒頭。マッサンは川辺にいて熊虎を頼ってきたことを後悔していたのではなかったでしょうか? さらに「(熊虎さんと一緒では)裏切り者の仲間じゃ思われて…」という後悔とも愚痴ともとれる台詞がありました。もっと言えば、面倒を見てくれようとしている熊虎に対する背信とも言えるのです。だったら、権利書を差し出され、夢を引き継いでくれと頼まれた時、

「(熊さんを疑った)わしにはその資格はないけー」とか、
「熊さん、わしゃ熊さんのことを避けとった。権利書は受け取れん」

などの、懺悔の1シーンがあってしかるべきだと思います。
川辺のシーンから権利書を渡されるシーンまで半日と経っていないのではないでしょうか。裏切り者(熊さん)の仲間とは思われたくないと思っていた矢先の出来事で、舌の根も乾かぬうちに、

「わしゃ、熊さんの夢をきっと引き継ぎます」

と、何のためらいも無く言えるものでしょうか? これはすでにマッサン・玉山くんの問題ではなく明らかに脚本の失態ではないでしょうか。ストーリー的には熊虎さんと一馬くんが分かり合えて絆を強くし、マッサンも土地、リンゴの心配もなくなり、それぞれが前へ進める明るい結果になりました。しかし、マッサンの変節漢ぶりは、会津武士からは「なりませぬ」と言われかねないでしょう。

 

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NHK連続テレビ小説『マッサン』鴨居の大将と英一郎。ここでも父と息子の確執の原因は母の死にあった。

http://www.nhk.or.jp/massan/story/index_12.html   http://www.nhk.or.jp/massan/premium/w11.html

 

もうひとつあります。父親と息子、または母親と娘の確執はドラマとしてたびたび描かれます。人生のテーマがそこにあるからです。しかし、思い出してみて下さい。鴨居の大将と英一郎くんの確執はいかなものであったでしょうか? 熊虎さんと一馬くんの確執は? どちらも母親絡みでしたね。母は病床で寂しかったという英一郎くんは、仕事に埋没している父親を憎んでいました。一馬くんも、苦労に苦労していた母親をよそに、父親の熊虎はニシン漁に夢中だったという、いわば、父親が母親を顧みなかったことで死に至らせたという禍根が原因ではないでしょうか。つまり、「男が家庭を顧みないで仕事に埋没している中で母親が寂しく世を去った」という同じ問題をくり返してドラマに仕立てているということです。最初は、それが原作にあり、モデルになっている人に起こったことなら受け容れようと思ったのですが、これは羽原さんのオリジナルであって、原作は存在しないということを知りました。であれば、似たような問題を並べてしまったのは不覚と言えます。ましてあの時代、男が家を顧みないことが憎しみの原因になったのでしょうか? さらに、父と息子の問題はもっと奥深い所に、いくつもあるのではないでしょうか? つまり「ファザコン」は探ればその闇はもっと深いはずです。

まだあります。鴨居の大将と英一郎くん、熊虎さんと一馬くんの確執からマッサンは逃げようとしましたね。このドラマではいつも逃げています。しかし、エリーが「なんとかしてあげたい」という気持ちで、深く関わります。マッサンは仕方なしにエリーについて行きます。そして、双方ともに和解しました。共にエリーの功績ですね。マッサンは、どちらかというと日和見で、情けない男でした。


第95回の風間杜夫さんの演技に魅せられて、辛気くさいドラマに陽光が射した気分になれたところでしたが、またもや、辛気くさい気分に逆戻りしてしまいました。つまり、私は玉山鉄二くんの演技もさることながら、この脚本が普通のことができていないので、そこが気になってドラマに入り切れていないのだと思います。

 

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映画『蒲田行進曲』(松竹・角川春樹事務所)楽しい映画でした。

 

さて、この稿を記すにあたって映画『蒲田行進曲』を見直したことは、上で述べた通りです。そして、分かったことは当時から風間杜夫さんの演技は素晴らしかったことです。あの映画では「ちゃらちゃらした銀ちゃん」「落ち込む銀ちゃん」「立ち直った銀ちゃん」の三人の銀ちゃんがいました。どれも素晴らしかったのだけれど、前の二つの銀ちゃんは役柄だけではなく、今の私でも受け容れがたい部分があります。適当かどうか分かりませんが、ピアニストのリストやヴァイオリニストのパガニーニの超絶技巧を素晴らしいと思いながらも好きになれないのと同じように、演技が上手であるが故に好きになれなかったという視聴者のわがままということでしょうか。宇野重吉さん、森繁久彌さん亡き後、風間さんあたりが穴を埋めてあまりある演技を見せてくれることを願ってやみません。階段落ちの日の「立ち直った銀ちゃん」は、階段を落ちた安が這い上がりながら言った、「銀ちゃん、かっこいい」と言う言葉を、そのまま今の風間杜夫さんに捧げたいと思います。

 

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映画『蒲田行進曲』(松竹・角川春樹事務所)階段落ちの当日、撮影所に続々と黒塗りの車が訪れた。訝(いぶか)しんだ銀四郎は「なんだこの連中は」と不機嫌に聞いた。取り巻きが「本社や劇場のエライさんたちだそうです」と答えると、不機嫌なまま現場へ向かった。この映画で屈指の「かっこいい銀(風間杜夫)ちゃん」です。

  

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