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NHK朝ドラ『マッサン』。後半の始まりは男二人の演技に救われて…。一人目の男、堤真一さん。

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NHK連続テレビ小説『マッサン』(NHK)マッサンを土下座させてしまい、瞑目する鴨居の大将。

 


第15週「会うは別れの始め」第90話はマッサンが退職届を鴨居の大将に渡すシーンでした。この展開で、私はウィスキー作りの職人(アーティスト)マッサンと商売人である鴨居の大将、二人の男の生き様の闘いを期待して見ていました。しかし、そこに居たのはどこまでも優柔不断で愚痴っぽいマッサンと、ウィスキー、ビールが売れない苦境の中、手足をもぎ取られる程のつらい思いをして、背を向けて去っていくという友人に愛の鞭を振るう、哀しくも頼もしい鴨居の姿でした。

 

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NHK連続テレビ小説『マッサン』(NHKマッサンは日本人が飲みやすいウイスキーづくりを目指し、ピートを炊かずに乾燥させた麦芽を使用した原酒をつくったり、水でウイスキーを希釈したりで新しいウイスキーを完成させたが、これも一向に売れなかった。苦悩するマッサン。

 

ウィスキーが売れなくて社内で孤立するマッサン。大将に頼まれて、信念を曲げてまで、売るために作ったウィスキーも売れなかった。マッサンにはつらい現実でした。妥協しないで、信じるウィスキーを作れという大将の息子、英一郎。マッサンは迷いの中にあり、苦しみのどん底にありました。しかし、それは果たして本当の苦しみだったのかという疑問があります。背中を押したのはエリー。漸くマッサンは鴨居商店から離れることを決断するのでした。なんだか、マッサンはいつもエリーに押されて決断しているダメ男に思えて仕方ありません。

 

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NHK連続テレビ小説『マッサン』(NHK「サンキュ グッドバイ」と言って、『マッサン』の舞台から去って行った泉ピン子さん。「サンキュ グッドバイ」のアドリブには賛否があるそうですが、私は素晴らしいと思いました。

 

さて、『マッサン』に関する投稿は2015.01.16の「共演者が泣かされた『マッサン』1月10日放送分の泉ピン子さんの死に際のド迫力演技に脱帽。」に次いで2度目です。あの時は、ドラマに締まりがなくてピン子さんに救われた気がしました。そして、ピン子さん亡き後どうなるものかと気をもんでいました。その後、マッサンは苦しいウィスキー作りが続きますが、見ている方もつらかった。確かに苦しんでいる状況は理解できました。いいものだからと言って売れるとは限らないし、では、どうすれば売れるのかは誰にも分からない。自分がうまいと思っても他人がうまいと思うかどうかは別物です。そんな暗中模索ほどつらいものはありません。しかし、マッサンの苦しみは「だったら、自立して自分の思うようなウィスキーを作ろう」と思い悩んでいたからでしょうか? ドラマの展開では見えてきません。どう見ても現状に当惑し、なす術もなく苦しんでいるようにしか見えませんでした。つまり、迷い子でしかなかった。しかし、そんな時に背を押したのはエリー。エリーが資本家を募り、独立する状況を作ってくれたのです。たまたまドラマの展開なのか、マッサンの演技力のなさなのか、だるーい一週間が過ぎようとしていました。

 

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NHK連続テレビ小説『マッサン』(NHK)エリーの助言で自立する決意をしたマッサンは、退職届を受け取ってもらうべく鴨居商店を訪れた。

 

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NHK連続テレビ小説『マッサン』(NHK)決意して退職届を出すマッサン。「いつか言いだすやろとおもーてたけど、一番きつい時に、おまえは鴨居を捨てるんか」と、半ば吐き捨てるように言う鴨居の大将。

 

で、第15週90回。鴨居の大将・堤真一は素晴らしかった。だるい一週間の起死回生の15分間でした。脚本が良かった? 演技が素晴らしかった? どちらかというと、私は脚本は並で、堤さんの演技が極上だったと思います。エリーを伴って、退職届けを渡すために鴨居商店を訪れたマッサンは、この時点では資金のメドがたっていませんでしたね。10万円。その頃の10万円は今の2〜3億円くらいだそうです。鴨居の大将は「金の算段ついたんか?」と尋ねます。まだ、メドが立っていないと知ると、大将は「やめとけ」と説諭しました。しかし、マッサンは「自分の信じるウィスキーを作るには、大将の元を離れるのが一番じゃと思いました」とさらりと言うのです。キツいなあ。キツ過ぎますよ、マッサン(脚本家さん)。ここまで、マッサンのキャラクターに対して、決して好感を持っていなかった私ですが、この台詞を聞いた時に漸く「私はマッサンが嫌い」と認識しました。それは脚本家の意志(イメージ)だったのでしょうか? しかし、次の展開は良かった。

 

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NHK連続テレビ小説『マッサン』(NHK)エリーが見守る中、大将は「お前には無理や」ときっぱりと言い切る。

 

鴨居の大将の口からは、ここからは説諭ではなく、我執にとらわれて周りが見えていない息子を恫喝するような台詞が次から次に飛び出したのです。

「無理や」
「おまえは経営者にはなれん」
「無理矢理社長になったらみんなが困る」
私も、そう思いました。通常のドラマであれば、
「大将、そこまで言わんでも…」
と、主役を応援しますよ。しかし、そうはなりません。どう見ても、シナリオ通り? のマッサンは何も見えていないし、何も分かっていない研究バカに思えるからです。大将の言葉はまだまだ続きます。
「エリーちゃんも従業員も、その家族も(みーんな困る)」
「ウィスキーに対する情熱は認める。だけど、おまえにはそれしかない。作ることだけに執着があって、売ること、宣伝することには全く関心がない」
と、鴨居の大将は言います。これ、現実にどういうことか分かりますか?
私たちの業界にもありがちなのですが。分かりやすいのは小学生の工作です。学校で数時間を費やして段ボールなどに色を塗ったり、カッターで切ったり、糊で貼付けたりしますね。子どもは楽しんで何かを学習していると思います。しかし、採点が終わって持ち帰った工作物の行き先はどこにあるのでしょう。出来が良ければ飾る。悪ければ…。ほとんどがゴミとして廃棄されます。鴨居の大将の言う「作ることだけに執着する」というのはそういう現実を作り出すのです。

 

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NHK連続テレビ小説『マッサン』(NHK)作ることだけにしか目を向けていない、我執に囚われたマッサンを危うく思う鴨居の大将。語る言葉も激しくなっていった。

 

大将の言葉は続きます。
「経営者言うんは商品を開発して、宣伝して、売らなあかん」
「石にかじりついても利益を上げて、みんなに分配せなあかん」
「おまえにはでけんやろ」
「わてはやるでー」
「例えイミテーションの鴨居、言われたって…。」
「従業員、食わしていくためには、メイドインジャパンのウィスキーを広めるためやったら、わてはなんでもやる。」
「おまえにはでけへんやろ」
と大将は、まだ目が覚めんのかとばかりに続けました。それは、すでに会社に留まって「わてと一緒に…」という思いはなかったはずです。私には、ここまで言われている時に「理屈でしか理解しない我がまま化学者」の固い頭を無理矢理にこじ開けているようにしか思えません。しかし、ここでもマッサンは、
「できます!」
と、何の根拠もない言葉を声を荒らげて言いました。もう、鴨居の大将からすると万事休すです。どうも、相手には通じない一線を感じたのでしょうか?
「ほな。なんで頭下げんのや」
大将はとうとう、言わされてしまった感があります。
「わてに頭下げて、土下座してでも10万円貸して下さい、ゆーたらえーやないか」
と、言ってしまいました。これ、本当は言いたくないのですよ。ドラマは、脚本家はどうだか知りませんが、行為させよう(動かそう)と説諭し、怒鳴り、優しく、キツく諭して来た結果、当人に目覚めて欲しかった。そして、大将に「筋じゃありませんが、10万円出資してもらえませんか」と自ら申し出なくては、鴨居の大将の気持ちの持って行き場がありません。世間の「自己中人間」にはこういうことが理解できないのです。関係が淡白であれば、簡単に「ほな、やってみなはれ」で分かれていたでしょう。しかし、この二人はそんな関係ではなかった。だから、鴨居の大将はマッサンにそのひと言を言って欲しかったはずです。マッサンは、大将に「ほな。なんで頭下げんのや」と、今、最大の課題である「資金調達の方法」を言わせてはいけなかったのです。マッサンはどこまでも我執にとらわれているために、そこには(大将の思い)思い至らなかった。これって、現実では「バカ」ですよ。

 

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NHK連続テレビ小説『マッサン』(NHK)「土下座せい」と言われて漸く気づいたマッサン。ついに土下座するも、大将の胸中はどのようなものであったろう。あまりにも哀し過ぎないか、マッサン。

 

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NHK連続テレビ小説『マッサン』(NHK)10万円の小切手を手にする大将。

 

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NHK連続テレビ小説『マッサン』(NHK)小切手を渡すと、背を向けて椅子に座る鴨居の大将。怒りが渦巻いていたに違いありません。それと同じほど励ましてあげたかった。しかし、瞬時に笑顔にはなれない大将。しばし、その時間が流れました。

 

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NHK連続テレビ小説『マッサン』(NHK)借りたお金は必ず返すと言うマッサンに、背を向けたままで「退職金や」と言う鴨居の大将は寂しそうでした。

 

やっとマッサンはそこに気づきます。脚本ではマッサンは何に気づいたのでしょうか? できれば鴨居の大将の「心情」であって欲しいのですが…。マッサンは両膝をつき、大将に土下座をします。見守るエリー、そして大将。それぞれの胸中は計り知れません。しかし、ドラマはともかく、こうした終わり方は後味が悪いものです。マッサンはともかく、鴨居の大将の身になってみれば、自分が言いだした「土下座」が実現したのです。一見、ハッピーエンドのようだけれども、大将には埋められない寂寥感が残ったのではないでしょうか? 土下座したマッサンに大将は10万円の小切手を手渡します。そして、くるりときびすを返して、しばし背中を向けて椅子に腰掛けました。

「大将、ありがとうございます。このお金は…(必ずお返しします)」と言う言葉を聞く間もなく、
大将は、
「返す必要はない。お前の退職金や」
と背を向けたままの姿勢で言うのでした。
覆水盆にかえらずと言いますが、大将に「お金借りたかったら土下座せい」と言わしてしまったら、どんな感謝の言葉ももう遅いのです。そんなとんちんかんが世の中には沢山います。この後、マッサンは資金を手に北海道に渡りますが、鴨居の大将にはえも言われない「澱(おり)」のようなものが残った気がしてならないのです。脚本家さんはそのように描きたかったのでしょうか? 

 

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NHK連続テレビ小説『マッサン』(NHK)エリーにだったら笑顔になれる。マッサンを置いてエリーに別れを告げる鴨居。「この先、何があろうと、どこに行こうと、わしはエリーちゃんの味方や。困ったことあったらいつでもおいで」。最後は何とか笑顔になれた鴨居の大将でした。

 

鴨居の大将 > マッサン
堤真一玉山鉄二
SUNTORY > NIKKA

 

こんな印象が私には残りました。脚本家さんはこれで良かったのでしょうか? 

 

堤真一さんは『三丁目の夕陽』以来、気になって見ている役者さんですが、何をやっても好印象が残ります。それは演技なのか、地(人柄)なのか定かではありませんが、この、どうしようもない、だれた『マッサン』のドラマにあって、ずっと光であり続けました。やや、オーバー気味な演技が周りと相容れないシーンもありましたが、この回の堤さんは、時折、現実の(SUNTORYの)社長さんの言葉のように私の胸を突き刺してきました。それは脚本云々の問題ではなく、明らかに堤真一の、鴨居欣次郎の言霊になっていたからだと思います。素晴らしい演技でした。またしてもNHK朝の連続ドラマ『マッサン』は脇の役者さんに助けられました。

 

最後に、この回を「名もなき人々」はどのように見ていたのか、一例を述べて、「NHK朝ドラ『マッサン』。後半の始まりは男二人の演技に救われて…。堤真一さん。」を終わります。近々、二人目の男「風間杜夫さん」を取り上げます。暇な折りにでも、また立ち寄ってください。

 

 

大将かっこよすぎだろう
サントリーもこれなら満足

本日、朝ドラ史上最も抱かれたい男が誕生した・・・
大将・・・あんた最高やで・・・

大将を器の大きい男にしたいのはわかるけど、これじゃマッサンがダメ過ぎるだろ…

この脚本家はマッサンが嫌いなの?

土下座すらできんのかい!まで言い放って土下座させといて
でも金は他あたってくれなんて言ったら…それはそれでメチャクチャ展開
鴨居が豪快にくれてやるのはやっぱ鴨居の大将やな!と思わせるイイ場面だった
リアルストーリーはどうか知らないけど結果鴨居が出して正解だと思った
来週から北海道か楽しみや

さすがにもう「やってみなはれ!」は言わなかったな
これからはライバルになる
「負けへんで」か・・・
ウホッ///かっこよすぎやろがいっ///

  

—Akitsu

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