TV、テレビ、自転車ときどきキッチン

Team 片手業・TV : 新番組、第1話、時代劇、水戸黄門、視聴談など

中村雅俊さん&柴田恭兵さんの『風の峠』は期待できそうです。43分間、緊張を持続できているのが素晴らしい。NHKで久々に楽しめそうな時代劇。

f:id:AkitsuYoshiharu:20150118005422j:plain

NHK木曜時代劇『風の峠~銀漢の賦』中村雅俊柴田恭兵さんのW主演。

http://www.nhk.or.jp/jidaigeki/ginkan/


上質の落語は演者の無言に笑います。
下手なコントは演者の饒舌にしらけます。

 

面白い落語は「言葉」や「言葉数」ではありません。演者がやおら膝を折り、座布団に座って、これもゆっくりと左右、奥手前を見回す。それだけでくすくすと笑わせた芸人さんがいました。その人、そのまま「お後がよろしいようで」と言い残して高座を下りていくかもしれない、そんな緊張感さえ漂わしていました。だから、何気ないひと言でも、聴く者は吹き出してしまう。間合いで作られた緊張感が命です。
真剣勝負なんて言う、物騒な経験はないけれど、二人が青眼にかまえて数分。微動だにしない。二人の額には粒の汗が…。目線を切ろうものなら、その時、その男は命を落とす。そこには悠久の時間が流れていた。これは距離と時間の間合い。拙い文章で「間」を表現してみました。

音楽にもあります。
モーツアルトピアノソナタ第5番ト長調 K283 第二楽章やピアノソナタ第11番ハ長調 K331第一楽章は「間」で聴かせてくれます。一方、おなじモーツァルトでもみなさんご存知のピアノソナタ第11番ハ長調 K331第三楽章トルコ行進曲はテンポで聴かせてくれますね。

 

f:id:AkitsuYoshiharu:20150118005536j:plain

『風の峠~銀漢の賦』2015年1月15日(木)開始 NHK総合・毎週木曜午後8時から

 

前置きが長くなりました。先週、始まった木曜時代劇『風の峠~銀漢の賦~』は期待できそうです。第一回放送分、満を持して拝見させていただきました。NHK時代劇はこのところ、満足できるものがありませんでした。今の大河だって散々な結果(まだ始まったばかりですが)になっているようですね。私は、吉田松陰そのものに興味が薄く、さらにその妹ということですから気持ちが乗っていきません。そんな人は少なくないのではないでしょうか? と、ここは大河を語る場合ではありませんね。『風の峠~銀漢の賦~』は面白かったと言うことです。

 

f:id:AkitsuYoshiharu:20150118010348j:plain

『警視庁鑑識課〜南原幹司の鑑定〜』の中村雅俊さんには老いが目立っていたが…。

http://www.tbs.co.jp/tbs-ch/item/d2391/

 

f:id:AkitsuYoshiharu:20150118010549j:plain

NHK木曜時代劇『風の峠~銀漢の賦』月ヶ瀬藩家老の柴田恭兵さんと日下部源五の中村雅俊さん。案に相違して、老け顔が年輪に見える頼もしい二人。

 

ドラマはいきなりイノシシの殺戮という衝撃的な場面から始まりました。この段階まで、正直言って、まだ私はドラマを疑っています。主役二人がすでに旬をとっくに過ぎた人だからです。中村雅俊さんの『警視庁鑑識課〜南原幹司の鑑定』(TBS)などをみると、目なんかほとんど開いていないのではないかと思うような風貌。『東京スカーレット〜警視庁NS係』(TBS)では完全に置物になっていました。演技どうのこうのではありませんね。なんだか、期待が持てないキャスティングに思えていました。もう一人の柴田恭平さんだって、『軍師官兵衛』(NHK)ではいい演技を見せてはくれましたが、すでに主役というより名傍役という感じでしたよ。その二人が主役なのですから、「出がらし」のシブーイドラマかなと。

 

f:id:AkitsuYoshiharu:20150118010941j:plain

NHK木曜時代劇『風の峠~銀漢の賦』源五を慕う下女の蕗だが、源五は蕗を娘と言う。蕗の思いは…。

 

次の場面に移った時、ドキッとしましたね。NHKにあるまじきシーンに思えたからです。真っ昼間、男と女の絡み合いですから、ふつーじゃありません。ありゃ、とへんな予感が。胸がざわつきました、客寄せなのかなというマイナスの予感と、いつもと違うなという期待感がないまぜになる場面でした。それが期待感に傾いたのは雅俊さんの演技でしたね。獲物のイノシシを放り投げると蕗・桜庭ななみさんを連れ去る。ずっと弛みのない映像でした。

 

f:id:AkitsuYoshiharu:20150118011149j:plain

NHK木曜時代劇『風の峠~銀漢の賦』若き日の源五・田中偉登くん 小弥太(のち将監)・大八木凱斗くん 十蔵・鏑木海智くん

 

このドラマは現在と過去を行き来する形で小気味よく進みます。子役はこのところのNHKは手抜きでキャスティングしたのではないかと思われることが多かった。『ぼんくら』はがっかりしましたし。ちょっと、見る側の私は気を抜き始めていました。しかし、今回は子役がいい。源五・田中偉登くん、小弥太・大八木凱斗くん、十蔵・鏑木海智くん、三人ともに素晴らしかった。中でも源五・田中偉登くんは中村さんに、小弥太・大八木凱斗くんは柴田さんにうまく重なっていました。違和感なく過去と現在が行き来できました。しかも、剣術のシーンにもゆるみがなく、間合い、テンポともに破綻のない仕上がりです。子どもながらの力感は表現できていました。ここでの子どもの立ち回りは、『大江戸捜査網2015』(テレビ東京)の人たちに見せてあげたいです。あのドラマ、ひどかった。まるで学芸会ですもの。役者だけのせいでもないでしょうね。間合いが悪いので、演者のすべてがチグハグ。演出、カメラワークもひどい。シナリオも訳が分からない。失った5時間を返して欲しい。

 

f:id:AkitsuYoshiharu:20150118011542j:plain

NHK木曜時代劇『風の峠~銀漢の賦』「まいりませぬ」「そなたひとりで行かれませ」と気丈な奥方たつは日下部源五の一人娘。日に日に存在感を増す吉田さん。

 

途中、吉田羊さん・源五の娘たつが少しだけ出ますが、十分間見続けたような印象を与えてくれました。何かが期待できる女優さんです。『HERO』などで大活躍ですが、『町医者ジャンボ!!』の看護婦、千種が陰陽を表現してくれて記憶に鮮明です。彼女が画面に出ただけで、その後の数分に緊張感が漂っていたようにも感じられます。

 

f:id:AkitsuYoshiharu:20150118011832j:plain

NHK木曜時代劇『風の峠~銀漢の賦』まさかまさかの平岳大くん。つい先日は善玉の吉宗を見たばかり。悪役もこなす、父親譲りの勉強家。

 

平岳大さんの悪役振りも見ものです。最初、元禄時代の町奴風の髪型には笑ってしまいましたが、その笑いは平さんの演技ですぐに消えました。少年に対する容赦のない剣劇も素晴らしかった。やはり、努力している人はひと味もふた味も違います。桔梗鋭之助(三匹の侍)のお父さんに負けていません。名門を継いで遊び回る不出来な歌舞伎役者や、周りに持ち上げられていい役で失敗する二世タレントが多い中、平岳大さんは出色です。

 

f:id:AkitsuYoshiharu:20150118012101j:plain

NHK木曜時代劇『風の峠~銀漢の賦』「人の美しさは覚悟と心映えです」は千鶴・中村ゆりさんの口ぐせであった。

 

この他の「役者さんも緊張感を盛り上げたり、持続させたり、立派な演技でしたが長くなりますので割愛。しかし、この第一話でドラマを回転させた、回転軸になったのは小弥太の母親・千鶴ではなかったでしょうか? なのに、番組のHPの「主な登場人物」にはその名がありません。不可解です。小弥太の母(千鶴・中村ゆり)は、源五、小弥太、十蔵を前に、

 

花の美しさは形にあり
人の美しさは覚悟と心映えです

 

と教え諭しました。
この歳になって、改めて襟を正しました。


とにかく43分間があっという間に過ぎ去っていました。久々に上質の時代劇が見られる予感がします。

 

まだ見ていない方へ。再放送が水曜日に予定されています。
再放送:【総合】翌週水曜日 午前1時25分から2時8分(火曜深夜)
再放送:【BSプレミアム】翌週水曜日 午後0時から0時43分
つまり、本放送の前日に、前の回の再放送があります。

「心映え(こころばえ)」についてのBlogがありました。
素晴らしいメッセージをお読みください。
…………………………………………………………

心延え(心映え)

難しい言葉だと思う。
最近は、使うことも
聞くこともーー
無くなったような気がします。

説明するにも、
簡単には行かない。
もしかしたら、
人の感性も、あるかもしれません。

心延えを、心映えと書く人もいる。

日本人の心の奥底には…
誰しも、あるような気がします。

それがあるから、
輸出大国、経済大国に
成れたのでは、ないだろうか??
他の国にはない、
繊細な、感性が成せる技。
それが心延えから、
来るものでは、ないのかと思う。

物を作る上で、
細部に行きとどく心配り…
それが、使う人の心を魅了する。

心延えが感じられないなら、
日本製品も…
ここまで、ブランド化することは、
なかっただろう。
日本人の心映えが
世界に通用した。
そんな感じだ。

…略…

しかし
最近、感じられなくなってきている。
そんな気がします。
もしかしたら
日本で作る製品が
少なくなったせいもあるかも??
それに、
メールによる言葉の短縮化、
心まで、薄れてきている。

…略…

やはり、こころばえ…
残して行かなくてはならない言葉。
心だと思います。

…略…

日本語の奥深さが
見える言葉だと思う。

 

【心延え】…とは?
気だて。 
普段からの心がけ。 
思いやりの心。 
おもむき。

 

手作りの製品。

デザインや
ファッションセンスだけでない。
作った人の、
心延えが感じられた時。
感動するような気がしますネ。。。
………………………………………………

気になる方は、是非全文をお読みください。
『日本語は面白い』

http://nihongohaomosiroi.seesaa.net/

 

このドラマの現場の声(抜粋)をお届けします。


「原作者のことば」……葉室麟
言葉は人生の忘れられない場面とつながっている。そんな思いでテレビドラマを楽しませていただこう。友達を思い出して、少しだけ泣くかもしれない。

脚本家のことば「人は覚悟と心映え」……森下直
時代劇は古臭い、というイメージがあるように思います。でも、今は使われない言葉も、所作も、衣服も、風景も、その中で語られる日本人の心も含めて、私にとってはファンタジーで、何かトキメクものがあります。

制作のことば「青春ドラマに捧ぐ」……海辺潔
一級の青春ドラマを見てきた世代にこそ、この時代劇を見て貰いたい。

詳しくは

http://www.nhk.or.jp/jidaigeki/ginkan/html_ginkan_midokoro.html

 

 

f:id:AkitsuYoshiharu:20150118012512j:plain

NHK木曜時代劇『風の峠~銀漢の賦』「銀漢になる」と誓う源五、小弥太、十蔵だが…。

 

最後にこのドラマの原作の題名になった蘇軾(そしょく)の漢詩『銀漢の賦』です。

中秋月

暮雲収蓋溢清寒
銀漢無聲轉玉盤
此生此夜不長好
明月明年何處看

中秋の月
暮雲(ぼうん) 収め尽くして 清寒(せいかん)溢れ、
銀漢 声なく 玉盤を転ず。
此(この)生 此(この)夜 長くはよからず、
明月(めいげつ) 明年(めいねん) いずれの処にて看みん。

 

(意)
日暮れ方、雲はすっかり無くなってさわやかな涼気がみなぎり、
銀河には玉の盆のような明月が音も無くさしのぼった。
この楽しい人生、この楽しい夜も永久につづくわけはない。
この明月を、明年はどこで眺めることだろう。

※蘇軾は中国北宋代最高の詩人と言われる。政治家であり書家。

  

—Akitsu

現在、下記の四つのサイトで Akitsu Blog を公開しています。

 

TV : 新番組、第1話、視聴談など

http://akitsuyoshiharuview.hatenablog.com/

 

昭和のこどもの物語 : 『小説 彼方のゆめちゃん』

http://akitsuyoshiharusyosetsu.hatenablog.com/

 

表紙の言葉 : デザイン、出版、社会

http://akitsuyoshiharuhyoushinokotoba.hatenablog.com/

 

自転車 : フォトエッセイ、エッセイなど

http://akitsuyoshiharucyclingtour.hatenablog.com/

 

*それぞれ3日~7日の周期で更新しています。

 

Akitsu Blog の Index です。更新状況が一覧できます。

http://akitsu.hatenablog.com/

 

 

銀漢の賦

銀漢の賦