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Team 片手業・TV : 新番組、第1話、時代劇、水戸黄門、視聴談など

武井咲さんと綾野剛さん&メフィスト賞受賞作『すべてがFになる』で、視聴率がひと桁ってどういうワケ?

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すべてがFになる』フジテレビ 武井咲綾野剛

http://www.fujitv.co.jp/F/index.html

 

ご存知ですか? 毎週火曜日にフジテレビ系で放送されている、武井咲(たけいえみ)と綾野剛(あやのごう)のW主演『すべてがFになる』は満を持してのドラマのはずが、フタをあけてみれば初回11.8%、2回10.2%、3回10.3%とジリ貧傾向。つい先日の放送分はついに7.7%と目を覆いたくなるばかりの惨状。もっとも、この作品の発表があった頃から一部では「視聴率1ケタの大コケ・大爆死なるか…?」などと噂されていたようです。当たっちゃた感がありますね。なぜ、強力な主演男優、女優を配しながらこの惨状を招いたのでしょうか?

 

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東京全力少女』(日本テレビ)父親役の渡部篤郎と奇妙なコンビバランスをみせてくれた。

http://www.ntv.co.jp/tokyo/

 

私が最初に武井咲さんのドラマを観たのは、渡部篤郎さんと共演した『東京全力少女』でした。それまで、こんなへんてこ? なドラマはパスだったのだけれど、「新番組」という表示に誘われてフラフラとその道へ入ってしまったのです。では、面白かったかというと、なんとなくねえ〜って感じでした。しかし、最終回まで観てしまいました。それは、タイトルのように、咲さんの「全力」感が好ましかったのと、渡部さんとの合わなさ(リズム感がね)が逆に面白かったからです。そして、時折、魅力的な表情を見せてくれる彼女に惹かれてしまっていたようです。このドラマの平均視聴率はなんと7.7%(関東地区・ビデオリサーチ社調べ)だったとか。

武井咲さんは、資生堂JTBなど、多くのCMに出演する他、イメージキャラやポスターなどを含めると、広告契約数は20社以上にのぼるそうで「新CMの女王」と言われて、期待されているのにも関わらず、彼女の主演作の視聴率は惨憺たるありさまで、一部のいじわるな人たちに「隠れ低視聴率女優」とまで噂されています。それも致し方ありません。

アスコーマーチ〜明日香工業高校物語〜』(テレビ朝日系列)平均視聴率 5.96%
『息もできない夏』(フジテレビジョン) 平均視聴率 9.8%
『お天気お姉さん』(テレビ朝日系列)平均視聴率 9.8%
(視聴率はいずれも関東地区・ビデオリサーチ社調べ)

 

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海の上の診療所』(フジテレビ)瀬戸内海を巡る海神丸でドラマは展開する。

http://www.fujitv.co.jp/uminoueno_shinryojo/index.html

 

アスコーマーチ~…』の平均視聴率 5.96%はともかく、『息もできない夏』『お天気お姉さん』はもうひと息で二桁でした。ファンとしては期待が持てるというものです。そして、『海の上の診療所』(フジテレビ系列)では、ついに二桁を達成しました。しかしね、咲さんはこのドラマでは準主役で、主役は松田翔太くんでした。惜しかったです。でも、このドラマが、彼女なしで面白くなったかどうか…。どちらかというと、松田翔太くんより目だってましたからね。これ以前のドラマ『お天気お姉さん』では、無愛想で「爆弾低気圧女」とあだ名される気象予報士の役を演じていますね。どんなキャラだったのでしょうか? 私は見逃してしまいましたが、「無愛想」が似合う娘のような気がします。これが後々災いするような予感はありました。

 

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『戦力外捜査官』(日本テレビ)/『ゼロの真実』(テレビ朝日

http://www.ntv.co.jp/senryokugai/ http://www.tv-asahi.co.jp/zeroshin/


デビューできたのはいいけれど、視聴率が伸びない中、そんな彼女でも主演がとれたのはなぜなのでしょうか? 消息通にようれば、咲さんが所属している事務所の売り込みがとても熱心だそうで、社長自ら出張っての営業だそうです。今や押しも押されもしない上戸彩さんを育てた事務所だから、会社も社長もそれなりの力があるのでしょうね。しかし、上戸さんと違って、咲さんは視聴者からの風当たりが強いようです。上述のように無愛想なキャラと他にも何かありそうで、ちょっと心配。ところで、プロダクションの方へ。風当たりはともかく、仕事させ過ぎてはいませんか? 先日放送の『…Fになる』の「数奇にして模型[後編]」を録画で観ていたのですが、咲さんのアップのシーンで目に隈があるように見えました。化粧などの見まちがいであればいいのですが。
ともあれ、咲さんはこのようにして瞬く間にしてお茶の間でその名を知られる女優になったのです。その後、『戦力外捜査官』『ゼロの真実〜監察医・松本真央〜』でも二桁の視聴率を稼ぎ、漸く地固めができた感がありました。そして、満を持しての『すべてがFになる』での主演です。正確には綾野剛くんとW主演。

 

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カーネーション』(NHK)久々の本格派女優、尾野真千子

http://www.officiallyjd.com/wp-content/uploads/2012/06/20120615_homaki_08.jpg

 

その綾野剛くん。NHK連続テレビ小説カーネーション』で、尾野真千子さん(小原糸子)と恋に落ちる紳士服職人を演じて有名になりました。あのドラマは最初から面白くて、楽しく観ていましたが、剛くんが出たあたりから、戦時中の話ということも手伝って、それまでの展開と似合わない暗さがつきまとい、私も含めてファンの人たちにはジレンマがあったようです。何せ、朝から不倫? ですからね。いかに、原作にあったとは言え、観たくないものは観たくありません。『カーネーション』の汚点(私見)はもう一つあります。子役の二宮星ちゃん、尾野真千子さんで作り上げた小原糸子像を、夏木マリさんが見事に崩壊させてくれました。尾野真千子さん、老け役をやりとおす実力はあったはず。原作者から何かありましたか? 未だに、あのキャスティングはミステリーです。

 

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空飛ぶ広報室』(TBS)新垣結衣綾野剛 /『S-最後の警官』(TBS)向井理綾野剛

http://www.tbs.co.jp/soratobu-tbs/ http://www.tbs.co.jp/S-saigonokeikan-/

 

さて、綾野剛くんですが、一気に女性に人気が出ましたね。誰かが言った「美しい日本」では、女性に支えられると盤石。剛くん、それから以降は役に恵まれ始めます。瑛太さん、尾野真千子さんW主演の『最高の離婚』では真木ようこさんの夫役を演じていて、準主演というところでしょうか。残念ながら私は見逃しています。しかし、次の『空飛ぶ広報室』は観ましたよ。新垣結衣さんとの呼吸はぴったりに見えました。楽しくて、嬉しくて、でもちょっぴり苦しくなったりして観ていました。バランスのいいドラマでした。『S-最後の警官』では、主演こそ向井理くんだけど、剛くんはピカイチのSATの狙撃手。いい味出していました。ここでも影を背負っていましたが…。

最高の離婚』(フジテレビ)平均視聴率 11.8%
空飛ぶ広報室』(TBS)平均視聴率 12.6%
『S-最後の警官』(TBS)平均視聴率 14.2%
(視聴率はいずれも関東地区・ビデオリサーチ社調べ)

こうしてみると、武井咲さんが視聴率に伸び悩んでいるのに比べて、綾野剛くんは順調に伸ばしています。視聴率だけがすべてではありませんが、ひとつの目安にはなりますね。

さて、今や主演俳優として押しも押されもせぬこの二人が累計『350万部』も読まれている森博嗣氏の「S&Mシリーズ」、『すべてがFになる』でW主演だと言うから話題になりました。先に述べたように、一部の人たちからはあれこれ言われていますが、私はファンになってしまった二人の主演だから期待していました。が、です。結果から言うと視聴率はともかく、最初の回から、一気見ができなかったのです。最初は仕事が忙しくなって疲れているのだろうと思っていました。「途中で眠気をもよおす俺は歳とってしまったなあ」なんて黄昏れることも。そうこうするうちに、デッキに録画した本数が増えていき、空き容量が少なくなったので、比較的つまらない『女はそれを許さない』(TBS)を先に観て、空きを作る始末。それほどなじめないドラマに仕上がっていました。何が悪いのか、ずっと考え込んでいました。もうすぐ最終回だと言うのに。

 

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森博着嗣著『すべてがFになる講談社ノベルス 装丁も知的? ロジック?

http://bookclub.kodansha.co.jp/product?code=181901

 

この原作、これまでに10回以上映像化のオファーがあったそうです。そして森さんはそのいずれにも無条件で許可していましたが、実現していなかった。どういう理由でしょうか。あとは、この件も含めて、期待を抱かせた二人の主演だというのになぜ視聴率が伸びないのか、人気がでないのか、私の拙い推測です。

ポイント1:ドラマや映画で筋立てとは全く関係のない、遊びのシーンがあります。『…Fになる』では国枝桃子(助教)がゼミ幹事の浜中くんを蹴飛ばすシーンもそのひとつなのでしょうね。あれは不愉快になります。これは「ギャグなんだ」「作り手は笑わせるつもりなんだ」と思って、その気になっては見るものの、単なる暴力に見えてしまいます。なぜでしょう? 武井咲さんつながりで思い出すのは『海の上の診療所』の最初の回で、瀬崎航太(松田翔太)くんがふらーっと海神丸を訪れた時に、風呂上がり? の眞子(武井咲)ちゃんの跳び蹴りにあってしまいます。あれは笑えました。何が違うのでしょうか。おそらく、ふたりの背景が描かれていないからだと思います。それぞれ、そのシーンを笑わせるに足る状況が作られていないということです。松田くん扮する瀬崎航太は少しおとぼけな愛すべき青年です。一方、眞子ちゃんは元ヤンの愛すべき女の子だからではないでしょうか。少なくとも視聴者にはそのように見えているはずなのです。だから、ことあるごとにスリッパで殴られる瀬崎航太が羨ましくもあります。つまり「愛」があるか無しか、なのでしょうね。国枝桃子に、そんな感情はあってはいけないと言うのでしょうね。そうではありません。国枝 桃子に愛の表現をさせろというのではなく、作り手、脚本家、演出する人などが、そのシーンに愛を持っているかどうかなのです。何だか「形」だけになっているような気がするんですが。

 

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『隠蔽捜査』(TBS)2週で1話がつらかった。

http://www.tbs.co.jp/inpei2014/

 

ポイント2:なぜ、2週で1話にしたのでしょう? 最近は、1時間の「刑事もの」は1話完結が多いですよね。その昔は「月光仮面の運命やいかに…、つづく」なんて、雑誌もTVも次に引っ張るのが常でした。それはそれで、みんな翌週、翌月まで余韻を楽しみながら待ったものです。今でも、恋愛ものなんかは1クール(10〜12話くらい)で1話って感じですが、それらは二つの流れが作ってあって、1クールのテーマみたいなものの流れと、その回で満足できる結末の二つで、観る人の解決できなくてやり場の無いストレスを半減させてくれています。つまり、視聴者は1回で収まりをつけたいのですね。特に、現代は慌ただしいですから。最近、刑事もので2回で1話というのは、記憶に新しいもので『隠蔽操作』(TBS)がそうでした。決着のつかないストレスは嫌だから、私は2週分たまったところで併せて観ていました。『…Fになる』に比べて、比較的分かりやすいドラマでも2週に分かれると、私はつらかったです。それらのドラマはきっと1時間(正味42分くらい)ではまとまらないのでしょう。特に『…Fになる』の場合は。だったら、2時間ものにしてシリーズ化はどうだったのだろう、などと考えてしまいます。

さて、『…Fになる』ですが、これは単なるミステリーではありません。サイエンスミステリー? 理系ドラマ? つまり、物理学とか数学などのような難しさがドラマ全体を覆っているわけです。私はただでさえ、論理的なものに弱いのに、それをふたつに断ち切られると、もうついていけません。書籍を読むのが苦手な人が数行読むと眠くなり、また翌日に同じところを読んでいて、その内に挫折すると聞きますが、それと似た現象です。もちろん、そんなのへっちゃらですよと言う人も沢山いるでしょうね。しかし、「理系ドラマ」「物理」「数学」というフィルターで少なからずの視聴者が落ちこぼれてはいないでしょうか。その種の人たちが結構多い。選挙でいうと浮動票みたいな、です。作り手は難しい方に力を入れがちですが、実は、大事なのは恥ずかしいほどに分かりやすいということが大切なのです。文学作品ではないのですから。

 

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名探偵ポワロ』(NHK)アガサの作品は絵になりやすい。

http://zackly.toypark.in/c_名探偵ポワロ.html

 

見方を変えてみましょう。アメリカにエラリイ・クイーンという作家がいます。一方、イギリスにアガサ・クリスティという作家がいます。日本ではどちらの知名度が高いでしょうか? 推測ですがアガサではないでしょうか。それはエラリイに比べて、アガサの方が圧倒的に映像作品が多いからです。私はエラリイを全巻読んで、後にアガサを読んだのですが30巻ほどで挫折してしまいました。つまらないからです。原作はエラリイの方が、断然、面白かった。読み応えがあったのです。しかし、エラリイ・クイーンの作品は、日本の映像では、『配達されない三通の手紙』くらいしか印象にありません。アメリカで1時間番組だったかでやっていましたが、日本には上陸しませんでした。一方、アガサはポアロだのマープルだの、数多くが映像化されていて、日本の茶の間にも届けられています。単純に言うとエラリイの作品は映像化しにくく、アガサのは映像に向いているということです。映像化しやすいかどうかは別にして、内田康夫さんの浅見光彦シリーズはTV(2時間番組限定です)向きですよね。失礼ですが原作は面白くないです。しかし、かれの作品はTVドラマなどの映像では楽しめます。しかし、2時間枠での話です。『最終章』(1時間もの)は風景などの映像を見せるのがいっぱいいっぱいで、ストーリーは台詞で説明というなんとも言えない出来の悪さでしたが。と言う訳で、『…Fになる』も、活字では楽しめても、映像化しにくい作品なのではないかと思います。

 

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『SHERLOCK/シャーロック』より ベネディクト・カンバーバッチマーティン・フリーマン

http://ameblo.jp/club-bijin/image-11874574077-12967819159.html

 

ポイント3:天才(主役)が二人いて、見る側にスタンスを与えてくれていない。漫才で言えばボケと突っ込みですね。ああいう風なバランスがとれていないのが理解しにくくしています。見る側はどっちが主役? って見方しますよ。でも、このドラマは両方が主役ですと視聴者を突っぱねるようなのは作り手の傲慢です。少なくともホームズとワトソンのようなきちんとした立ち位置が描かれていればもっと観やすいのかも知れません。巻き込まれ型の咲さんがボケきっていないということでしょうか? 演技が拙いせいもあるでしょうが、それは織り込み済みのはず。あくまでも脚本、演出の範疇の問題だと思います。それともプロダクションの意向(イメージを落とさないで)があるのでしょうか? コマーシャルに沢山出ているとそういう縛りもあるやに聞いています。あくまでも憶測ですが。

最後に、この原作、これまでに沢山の映像化のオファーがあったそうです。そして森さんはそのいずれにも無条件で許可していたそうですが、実現していません。オファーというのがTVなのか映画なのか分かりませんが、既述のように映像化しにくいと判断されているのかもしれません。しかし、モノづくりの世界に身を置く者であれば、難しいからと言って手を引くものではありません。むしろ「おれに作らせてみろ」と思うでしょう。私なども、面白いテーマであれば撃沈覚悟で進んで挑戦しますよ。この原作は誰もが作ってみたいと思うような作品なのでしょうね。難しいと思われる作品を敢えて映像化に踏み切ったフジテレビのプロデューサー氏やスタッフの皆さんには、心から敬意を表します。しかし、結果は惨敗状態。残念です。

 

—Akitsu

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すべてがFになる (講談社ノベルス)

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Xの悲劇 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

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そして誰もいなくなった (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

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